この記事では『トランスの浮遊容量』について
- トランスの『浮遊容量』とは
- トランスの『浮遊容量』の測定方法
などを図を用いて分かりやすく説明するように心掛けています。ご参考になれば幸いです。
トランスの『浮遊容量』とは
トランスの電線と電線が平行している部分は微小なコンデンサ成分を持っています。この意図しないコンデンサ成分のことを『浮遊容量』といいます。浮遊容量は寄生容量や漂遊容量(ひょうゆうようりょう)とも呼ばれています。
上図にトランスの等価回路を示しています。例えば、等価回路において1次巻線の浮遊容量は\(C_{S1}\)の箇所となっています。
トランスの『浮遊容量』の測定方法
上図にトランスの等価回路を示しています。
トランスの2次側を開放した測定では、トランスの一次インダクタンス(励磁インダクタンス)\(L_P\)、浮遊容量\(C_{S1}\)、鉄損抵抗\(R_i\)を測定することができます。
上図にトランスの2次側を開放した時におけるインピーダンス\(Z\)の周波数特性を示しています。
周波数\(f\)が低い時は一次インダクタンス\(L_P\)が支配的になります。一次インダクタンス\(L_P\)のインピーダンス\(Z_{LP}\)は\(Z_{LP}=2{\pi}fL_P\)なので、周波数\(f\)が高くなると、インピーダンス\(Z\)が大きくなります。
しかし、ある周波数(共振周波数という)\(f_R\)で、一次インダクタンス\(L_P\)と浮遊容量\(C_{S1}\)が並列共振現象を起こし、急激にインピーダンス\(Z\)が増加します。
共振周波数\(f_R\)を超え、周波数\(f\)がさらに高くなった状態では、浮遊容量\(C_{S1}\)が支配的になります。浮遊容量\(C_{S1}\)のインピーダンス\(Z_{CS1}\)は\(Z_{CS1}=\displaystyle\frac{1}{2{\pi}fC_{S1}}\)なので、周波数\(f\)が高くなると、インピーダンス\(Z\)が小さくなります。
このトランスの周波数特性を用いると、トランスの一次インダクタンス\(L_P\)や浮遊容量\(C_{S1}\)を測定することができます。トランスの一次インダクタンス\(L_P\)は共振周波数\(f_R\)よりも低い周波数におけるインピーダンス\(Z\)の傾きから近似して求めることができます。一方、トランスの浮遊容量\(C_{S1}\)は共振周波数\(f_R\)よりも高い周波数におけるインピーダンス\(Z\)の傾きから近似して求めることができます。
また、共振周波数\(f_R\)において、インピーダンスが高くなった点は鉄損による抵抗成分(コア損失による抵抗成分)\(R_i\)と近似することができます。
補足
- LCRメータを用いる場合、低い周波数(例えば1kHz)で一次インダクタンス\(L_P\)を測定し、高い周波数(例えば100kHz)で浮遊容量\(C_{S1}\)を近似測定することができますが、測定値が信用できるかは測定対象よりけりです。
まとめ
この記事では『トランスの浮遊容量』について、以下の内容を説明しました。
- トランスの『浮遊容量』とは
- トランスの『浮遊容量』の測定方法
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