積層セラミックコンデンサ(セラコン)はセラミック(焼き物)で出来ているため、機械的ストレスを加えるとクラック(ひび割れ)が発生する可能性があります。
この記事では『積層セラミックコンデンサ』について
- クラックが入った時の影響
- クラックの原因と対策
などを図を用いて分かりやすく説明するように心掛けています。ご参考になれば幸いです。
積層セラミックコンデンサ(セラコン)にクラックが入った時の影響
積層セラミックコンデンサ(セラコン)にクラックが入ると、下記のような影響があります。
- 静電容量が低下する
- 絶縁抵抗が低下する
- オープン故障する
- ショート故障する
- 低抵抗モード(微妙にショート故障している状態)になる
クラックが入った時に、対向している内部電極が導通するとショート故障となります。
また、クラック発生時はオープン故障の状態でも、市場で使用されている間に、はんだフラックス中の湿気がクラックの隙間を通して侵入したり、空気中の水分を吸収したりすることによって、『低抵抗モード』や『ショート故障』に進行する可能性があります。ショート故障すると、異常発熱、発煙、発火などを引き起こす可能性があるため、信頼性が必要なアプリケーションでは対策が不可欠です。
補足
- 積層セラミックコンデンサは英語では「Multilayer Ceramic Capacitor」や「Multi-Layer Ceramic Capacitor」や「Multi-Layered Ceramic Capacitor」と書きます。英語の頭文字をとって、MLCCとも呼ばれています。
- 基板にセラコンが実装している状態で不具合が再現しても、基板からセラコンを取り外すと、不具合が再現しない場合があるので、セラコンのクラックは解析が厄介な不良や故障です。
積層セラミックコンデンサ(セラコン)にクラックが入る原因
積層セラミックコンデンサ(セラコン)は下記に示すような原因でクラックが入ります。
- 基板の反りや曲げ
- 基板分割時に発生する応力
- 吸着ノズルによる応力
- はんだ量が過剰
次に各々の原因について詳しく説明します。
【セラコンのクラック原因】基板の反りや曲げ
コネクタ等の挿入部品の取り付け時、基板のビス止め時、基板検査時などに、基板に過渡的な力が加わり、基板が反ったり曲がったりすると、セラコンにクラックが発生することがあります。
基板が反ると、基板の上面は伸び、下面は縮みます。この伸び縮みによって、ランドが左右に移動します。ランドが移動すると、セラコンに引張応力が発生します。この引張応力がセラコンの強度を上回るとクラックが生じます。
補足
- 基板に実装している電気部品は発熱するため、基板も熱くなります。基板が熱くなると、熱膨張を起こし、見えないレベルで基板に反りが生じます。この反りによってもセラコンにクラックが発生することがあります。
- セラコンのクラックははんだの盛り量が多いほど、発生しやすくなります。
基板の反りや曲げによって発生するクラックの対策
基板の反りや曲げによって発生するクラックの対策を下記に示します。
- 基板が反ったり曲がったりした時にストレスが加わる方向に対して、垂直に部品を配置する。
- ビス止め時や挿入部品の差し込み時には基板が反らないように、サポートピンや治具を用いる。
- 挿入部品の差し込み穴を大きくし、挿入時の基板への応力を小さくする。
- 挿入部品を差し込む時に、基板の下部にサポートピンを用いて支持する。
- サポートピンを使用する場合、各々のサポートピンの高さに違いがないことに気を付ける。
- 基板を専用治具で固定する
【セラコンのクラック原因】基板分割時に発生する応力
基板分割時、基板に過渡的に力が加わり、セラコンに引張応力が発生します。この引張応力がセラコンの強度を上回るとクラックが生じます。
基板分割時にセラコンが受ける機械的ストレスは
の順番で大きくなります。
基板分割時に発生するクラックの対策
基板分割時に発生するクラックの対策を下記に示します。
- 基板の端にセラコンを置かない
- 分割ラインに対して平行にセラコンを配置する
- 専用治具で基板を分割する
→基板の端に近づくほど、機械的ストレスが大きくなります。また、L字基板での折れ曲がった部分なども応力が集中しやすいので、セラコンを配置しないほうが良いです。
→分割ラインに対して平行にセラコンを配置すると、基板分割時に短辺方向が歪むので、クラックが発生しにくくなります。分割ラインに対して垂直にセラコンを配置すると、長辺方向が歪むため、クラックが発生しやすくなります。
→手割りは機械的ストレスが大きくなるため、手割りではなく、専用治具で基板を分割すると、クラックが発生しにくくなります。
【セラコンのクラック原因】吸着ノズルによる応力
吸着ノズルの下支点が低すぎる場合、実装時、セラコンの中央部分に機械的ストレスを与え、クラックが生じることがあります。
吸着ノズルよって発生するクラックの対策
吸着ノズルよって発生するクラックの対策を下記に示します。
- 吸着ノズルの下支点は、基板の反りが無い状態で、基板上面に設定する。
- 吸着ノズルの圧力は、静荷重で1N~3Nにする。
- 吸着ノズルによって基板が反らないように、基板裏面に支持ピンを当てて、基板の反りを抑える。
【セラコンのクラック原因】はんだ量が過剰
はんだの量が多いと、はんだの収縮により素子に加わるストレスが大きくなり、クラックが生じることがあります。
一方、はんだの量が少ないと、セラコンの脱落の原因にもなります。そのため、はんだ量が適切になるように、ランド設計をする必要があります。
また、セラコンの両サイドのはんだ量がアンバランスの状態になっても、クラックが生じやすくなります。
はんだ量過剰よって発生するクラックの対策
はんだ量の過剰によって発生するクラックの対策を下記に示します。
- はんだ量が適切になるように、ランド設計をする。
→ランドの最適寸法と最適形状が、各コンデンサメーカーの資料にあるので、参考にしてください。「コンデンサ クラック」とGoogle等で検索すると資料がいつくかヒットします。『セラコンの短辺の長さd』よりも『ランド長さc』の方を小さくすると良いようです。
【セラコンのクラック原因】その他
今まで説明したクラックの原因以外にも、
- はんだ付けする際のはんだごてからの応力
- セラコンを落下させてしまった時の衝撃
- 基板の角とセラコンのぶつけによる衝撃
- 基板が振動している時にかかる応力
によってもセラコンはクラックが生じる可能性があります。
落下させてしまったセラコンは、すでに品質が損なわれている可能性が多いので、使用しない方が良いです。
まとめ
この記事では『積層セラミックコンデンサ』について、以下の内容を説明しました。
- クラックが入った時の影響
- クラックの原因と対策
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