この記事ではコンデンサCのみ接続した交流回路において
- コンデンサCのみ接続した交流回路の『位相』について
- コンデンサCのみ接続した交流回路の『ベクトル図』の描き方
などを図を用いて分かりやすく説明しています。
コンデンサCのみ接続した交流回路の『位相』
交流電圧\(v\)にコンデンサ\(C\)(静電容量を\(C{\mathrm{[F]}}\)とする)のみ接続した回路を上図に示しています。
コンデンサ\(C\)に交流電圧\(v\)を印加した時、コンデンサ\(C\)に\(i=I_M{\sin}{\omega}t\)の交流電流が流れたとします。
この時、交流電流\(i\)がコンデンサ\(C\)に流れているので、コンデンサ\(C\)にかかる電圧\(v_C\)は次式で表されます。
\begin{eqnarray}
v_C&=&\frac{q}{C}\\
&=&\frac{1}{C}{\displaystyle\int}idt\\
&=&\frac{1}{C}{\displaystyle\int}I_M{\sin}{\omega}tdt\\
&=&\frac{I_M}{C}{\displaystyle\int}{\sin}{\omega}tdt\\
&=&-\frac{I_M}{{\omega}C}{\cos}{\omega}t\\
&=&\frac{I_M}{{\omega}C}{\sin}\left({\omega}t-\frac{{\pi}}{2}\right){\mathrm{[V]}}
\end{eqnarray}
ここで、コンデンサ\(C\)にかかる電圧\(v_C\)は交流電圧\(v\)と等しいので、交流電圧\(v\)は次式で表されます。
\begin{eqnarray}
v=v_C=\frac{I_M}{{\omega}C}{\sin}\left({\omega}t-\frac{{\pi}}{2}\right){\mathrm{[V]}}
\end{eqnarray}
ここで、コンデンサ\(C\)に流れる交流電流\(i\)、交流電圧\(v\)、コンデンサ\(C\)にかかる電圧\(v_C\)をまとめると以下のようになります。
\begin{eqnarray}
i&=&I_M{\sin}{\omega}t{\mathrm{[A]}}\\
v&=&\frac{I_M}{{\omega}C}{\sin}\left({\omega}t-\frac{{\pi}}{2}\right){\mathrm{[V]}}\\
v_C&=&\frac{I_M}{{\omega}C}{\sin}\left({\omega}t-\frac{{\pi}}{2}\right){\mathrm{[V]}}
\end{eqnarray}
すなわち、『コンデンサ\(C\)にかかる電圧\(v_C\)』は『コンデンサ\(C\)に流れる交流電流\(i\)』より位相が\(\displaystyle\frac{{\pi}}{2}{\mathrm{[rad]}}\)(\(90°\))遅れている(言い換えれば、『コンデンサ\(C\)に流れる交流電流\(i\)』は『コンデンサ\(C\)にかかる電圧\(v_C\)』より位相が\(\displaystyle\frac{{\pi}}{2}{\mathrm{[rad]}}\)(\(90°\))進んでいる)ということになります。
位相の『進み』と『遅れ』の見分け方
『コンデンサ\(C\)にかかる電圧\(v_C\)』と『コンデンサ\(C\)に流れる交流電流\(i\)』の波形を見れば、位相の『進み』と『遅れ』を簡単に見分けることができます。
『コンデンサ\(C\)にかかる電圧\(v_C\)』は\({\omega}t=\displaystyle\frac{{\pi}}{2}\)の時に増加し始めます。
一方、『コンデンサ\(C\)に流れる交流電流\(i\)』は\({\omega}t=0\)の時に増加し始めます。『コンデンサ\(C\)に流れる交流電流\(i\)』の早く増加していますね。
そのため、『コンデンサ\(C\)に流れる交流電流\(i\)』の方が進んでいることが分かります。
コンデンサCのみ接続した交流回路の『ベクトル図』
まず、交流電圧\(v\)にインピーダンス\(Z\)を接続した交流回路を考えます。
交流電圧\(v\)のベクトルを\({\dot{V}}\)、インピーダンス\(Z\)のベクトルを\({\dot{Z}}\)、流れる交流電流\(i\)のベクトルを\({\dot{I}}\)とします。この時、交流電圧\({\dot{V}}\)、インピーダンス\({\dot{Z}}\)、交流電流\({\dot{I}}\)は次式の関係があります。
\begin{eqnarray}
{\dot{Z}}&=&\frac{{\dot{V}}}{{\dot{I}}}\\
\\
{\dot{V}}&=&{\dot{Z}}{\dot{I}}\\
\\
{\dot{I}}&=&\frac{{\dot{V}}}{{\dot{Z}}}
\end{eqnarray}
今回は、コンデンサ\(C\)のみ接続した交流回路を考えます。この時、インピーダンス\({\dot{Z}}\)は次式となります。
\begin{eqnarray}
{\dot{Z}}=\frac{1}{j{\omega}C}=-j\frac{1}{{\omega}C}
\end{eqnarray}
したがって、交流電圧\({\dot{V}}\)と交流電流\({\dot{I}}\)は次式となります。
\begin{eqnarray}
{\dot{V}}&=&{\dot{Z}}{\dot{I}}=-j\frac{1}{{\omega}C}{\dot{I}}\\
\\
{\dot{I}}&=&\frac{{\dot{V}}}{{\dot{Z}}}=\frac{{\dot{V}}}{\displaystyle\frac{1}{j{\omega}C}}=j{\omega}C{\dot{V}}
\end{eqnarray}
コンデンサ\(C\)にかかる電圧\(v_C\)のベクトルを\({\dot{V_C}}\)とします。コンデンサ\(C\)にかかる電圧\({\dot{V_C}}\)は交流電圧\({\dot{V}}\)と等しいため、次式で表されます。
\begin{eqnarray}
{\dot{V_C}}={\dot{V}}=-j\frac{1}{{\omega}C}{\dot{I}}
\end{eqnarray}
また、『交流電圧\({\dot{V}}\)の大きさ\(V\)』、『交流電流\({\dot{I}}\)の大きさ\(I\)』、『コンデンサ\(C\)にかかる電圧\({\dot{V_C}}\)の大きさ\(V_C\)』は次式で表されます。
\begin{eqnarray}
V&=&|{\dot{V}}|=\sqrt{\left(\frac{1}{{\omega}C}I\right)^2}=\frac{1}{{\omega}C}I\\
\\
I&=&|{\dot{I}}|=\sqrt{\left({\omega}CV\right)^2}={\omega}CV\\
\\
V_C&=&|{\dot{V_C}}|=\sqrt{\left(\frac{1}{{\omega}C}I\right)^2}=\frac{1}{{\omega}C}I
\end{eqnarray}
ここで、各ベクトルの式と大きさが求まったので、次にベクトル図を描いてみましょう。
『ベクトル図』の描き方
まず、基準とするベクトルを交流電流\({\dot{I}}\)とします。
この時、『コンデンサ\(C\)にかかる電圧\({\dot{V_C}}\)』と『交流電圧\({\dot{V}}\)』のベクトルは以下のように描きます。
- コンデンサ\(C\)にかかる電圧\({\dot{V_C}}\)のベクトル
- 交流電圧\({\dot{V}}\)のベクトル
コンデンサ\(C\)にかかる電圧\({\dot{V_C}}\)は「\({\dot{V_C}}=-j\displaystyle\frac{1}{{\omega}C}{\dot{I}}\)」で表されます。そのため、コンデンサ\(C\)にかかる電圧\({\dot{V_C}}\)のベクトルの向きは交流電流\({\dot{I}}\)のベクトルを時計周りに90°回転した向きになります。コンデンサ\(C\)にかかる電圧\({\dot{V_C}}\)の大きさ(長さ)は交流電流\({\dot{I}}\)を\(\displaystyle\frac{1}{{\omega}C}\)倍したものとなります。
交流電圧\({\dot{V}}\)は「\({\dot{V}}={\dot{V_C}}\)」で表されます。そのため、交流電圧\({\dot{V}}\)はコンデンサ\(C\)にかかる電圧\({\dot{V_C}}\)と向きと大きさが同じになります。
したがって、『コンデンサ\(C\)のみ接続している交流回路』のベクトル図は上図のようになります。
『交流電流\({\dot{I}}\)』に対して、『コンデンサ\(C\)にかかる電圧\({\dot{V_C}}\)』は位相が遅れているということになります。また、『交流電流\({\dot{I}}\)』に対する『コンデンサ\(C\)にかかる電圧\({\dot{V_C}}\)』の位相差は\(-\displaystyle\frac{{\pi}}{2}{\mathrm{[rad]}}\)(\(90°\))となります。
各ベクトルの長さ(大きさ)は、先ほど計算で求めた
\begin{eqnarray}
V&=&|{\dot{V}}|=\sqrt{\left(\frac{1}{{\omega}C}I\right)^2}=\frac{1}{{\omega}C}I\\
\\
I&=&|{\dot{I}}|=\sqrt{\left({\omega}CV\right)^2}={\omega}CV\\
\\
V_C&=&|{\dot{V_C}}|=\sqrt{\left(\frac{1}{{\omega}C}I\right)^2}=\frac{1}{{\omega}C}I
\end{eqnarray}
となります。
ベクトルの向きについて
ベクトルの向きの決め方についてもう少し詳しく説明します。
ベクトルの『向き』について
式に虚数単位『\(j\)』が付くとベクトルの向きが90°回転します。
- 『\(+j\)』が付いている時
- 『\(-j\)』が付いている時
ベクトルは反時計周りに90°回転します。
ベクトルは時計周りに90°回転します。
コンデンサ\(C\)にかかる電圧\({\dot{V_C}}\)は「\({\dot{V_C}}=-j\displaystyle\frac{1}{{\omega}C}{\dot{I}}\)」の式で表されます。そのため、ベクトル\({\dot{V_C}}\)の向きはベクトル\({\dot{I}}\)を時計周りに90°回転した向きとなります。
基準ベクトルについて
基準ベクトルについてもう少し詳しく説明します。
基準ベクトルについて
基準ベクトルを\({\dot{A}}\)にした時、ベクトル\({\dot{B}}\)が上記のように回転している場合を考えてみます。
『位相の"進み"と"遅れ"』、『位相差の"正(プラス)"と"負(マイナス)"』は基準ベクトルから『反時計方向に回転しているか』or『時計周りに回転しているか』で下記のように決まります。
- ベクトル\({\dot{B}}\)が反時計方向に回転している場合
- ベクトル\({\dot{B}}\)が時計方向に回転している場合
位相が進んでいるということ。位相差は『正(プラス)』で表します。
位相が遅れているということ。位相差は『負(マイナス)』で表します。
『交流電流\({\dot{I}}\)』を基準ベクトルとして考えると、『コンデンサ\(C\)にかかる電圧\({\dot{V_C}}\)』は時計周りに回転しています。
そのため、『交流電流\({\dot{I}}\)』に対して、『コンデンサ\(C\)にかかる電圧\({\dot{V_C}}\)』は位相が遅れているということになります。また、『交流電流\({\dot{I}}\)』に対する『コンデンサ\(C\)にかかる電圧\({\dot{V_C}}\)』の位相差は\(-\displaystyle\frac{{\pi}}{2}{\mathrm{[rad]}}\)(\(90°\))となります。
一方、『コンデンサ\(C\)にかかる電圧\({\dot{V_C}}\)』を基準ベクトルとして考えると、『交流電流\({\dot{I}}\)』は反時計周りに回転しています。
そのため、『コンデンサ\(C\)にかかる電圧\({\dot{V_C}}\)』に対して、『交流電流\({\dot{I}}\)』は位相が進んでいるということになります。また、『コンデンサ\(C\)にかかる電圧\({\dot{V_C}}\)』に対する『交流電流\({\dot{I}}\)』の位相差は\(+\displaystyle\frac{{\pi}}{2}{\mathrm{[rad]}}\)(\(90°\))となります。
まとめ
この記事ではコンデンサCのみ接続した交流回路について、以下の内容を説明しました。
- コンデンサCのみ接続した交流回路の『位相』について
- コンデンサCのみ接続した交流回路の『ベクトル図』の描き方
お読み頂きありがとうございました。
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